人工知能の限界とは?書評「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」

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最近、書店に行くと沢山のAI関連書籍を目にすると思います。

「AI」っていう単語はもちろん知ってるけど、結局何ができて何ができないのか分からない、、、、、

勉強はしたいけど、難しい専門書はちょっと、、、、

 

という人にもぴったりで「2019年ビジネス書大賞 大賞」にも輝いた

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」という本を紹介します。

本の著者は、東大合格を目指すAI「東ロボくん」の育ての親です。

この本には、同プロジェクトから見えてきたAIの可能性と限界、そして人間との関係が書かれています。

 

著者

 

著者は、新井 紀子 (あらい のりこ)という人物。

国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長。

イリノイ大学5年一貫制大学院数学研究科単位取得退学(ABD)。

東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学という経歴の持ち主で

2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトのディレクタを務め、国内外から注目されています。

 

「ロボットは東大に入れるか」東ロボくんプロジェクト!

 

東ロボくん(とうろぼくん)とは、日本の国立情報学研究所(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構)が中心となって

2011年から2016年にかけて行われたプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」において研究・開発が進められた人工知能の名称です。

 

このプロジェクトは、ロボットが東大に合格できるだけの能力を身につける事を目指しながら、AIには何ができて何ができないのかを解明することが目的でした。

 

残念ながら東大合格には至らず、2016年にこのプロジェクトは凍結されてしまうのですが

最後に受験した模試では、偏差値57.1という驚異的な数字を達成しています。

 

MARCHレベルの数字は達成できるのに、東大へは不可能だと著者は断言しています。

なぜ、わずか数年で大きく進歩したにもかかわらずそう断言できるのでしょうか?

 

そこにはAIが決して越えることのできない大きな壁が関係していました。

 

そもそもAIとは?

 

AI(エーアイ)の正式名称は

Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)日本語に訳すと「人工知能」です。

 

AIの定義は様々ですが、本書では知能を持ったコンピュータという意味で使われています。

 

AIはまだ存在しない?

 

ここでびっくりするのが、AIを知能を持ったコンピュータと定義すると、AIはまだ存在しないという事です。

 

「人工知能」というからには、人間の一般的な知能とまったく同じとまではいかなくても、同等レベルの能力を持っているべきでなければなりません。

基本的にコンピューターがしているのは計算(四則演算)であり、人間の知的活動を四則演算で表現する事は出来ません

 

それではiOSに搭載されている“Siri”や

プロ囲碁棋士をハンディキャップなしで打ち破った“AlphaGo”はいったいなんなのでしょう?

 

現在のAIと呼ばれているものは、その途中で生まれている副産物である「AI技術」です。

AI技術というのは、AIを実現するために開発されているさまざまな技術を指す言葉であって、AIそのものではない。

 

要するに、あたかも意味を理解し会話しているように感じる“Siri”や

囲碁の勝負で人間に勝ち、人間を超えたと期待を膨らませた“AlphaGo”は

厳密にいうとAI(人間の知能と同等)ではなくAI技術(まだ開発中の段階)であるということです。

 

AIが得意な事

 

AIはデータ処理の最適化や、複数データの共通点を探索することが得意なので

世界史や数学の偏差値は飛躍的に向上しました。

 

世界史の解き方は、情報検索に加え

「オントロジー(モノゴトをコンピュータに理解させるためにつける分類や名前)」を作成。

 

数学では論理的な自然言語処理と数式の処理の組み合わせで解き

東大入試プレでは、偏差値が数学76.2、世界史61.8という驚異的な数字を叩き出しました。

 

問題文の意味が分からなくても答えられる分野は、正答率が高いということです。

 

ワトソンの活躍

 

2011年にアメリカのIBM社が開発したAI“ワトソン”が、アメリカのクイズ番組「ジョバディ!」で

チャンピオン2人を破ってニュースになります。

その後、ワトソンはみずほ銀行のコールセンターや、東大の医療学研究所に導入されました。

 

ジョパティの問題には特徴があり、最後に「この○○は何か(This ○○)」と訊ねる形式になっています。

このような「ファクトイド型質問(名称や日付け・数値など事実に基づく正答を求める質問)」には効果的な解法があり、AIは得意です。

 

ワトソンのコールセンターでの役割は、顧客の問い合わせが、FAQのどれに該当するかをオペレーターに伝えることでした。

用意されたFAQ(よく聞かれる質問とその回答集)に沿って応答するのに、お得意の検索機能が力を発揮しました。

 

AIが苦手な事

 

一方で国語や英語など文章を理解することや

学習させていないことの判断などが苦手だという事です。

 

会話の中での前後の意味や様々な状況を理解しないと

意味が分からない文章はたくさんあります。

 

大量のデータの中にないような問題はAIでは正解できません。

 

文章をパターン化し「ディープラーニング(深層学習)」を駆使して150億文覚えたにもかかわらず

4択問題の正答率でさえ画期的に向上させることはできなかったそうです。

 

文脈の理解

 

ここで東ロボくんが解けなかった英語の問題を紹介します。

 

(訳)

ネイト:もうすぐ本屋だよ。あと、2、3分かな。

スニール:ちょっと。(      )

ネイト:ありがとう。よくあるんだよね。

スニール:5分前に結んでなかったっけ?

ネイト:だね。今度はしっかり結んどくよ。

 

空欄に入れるべき文は次のうちどれでしょう。

 

①随分歩いたね

②もうすぐだね

③いい靴だね

④靴の紐ほどけてるよ

 

正解は④の「靴の紐ほどけてるよ」です。

が東ロボくんは②の「もうすぐだね」を選びました。

東ロボくんの解法のロジックは、本書に記載されています。

このような文脈を読み取らないと答えが出ないような問題はAIでは答えることができません。

 

「暑い時には冷たい飲み物」「アイスクリームは冷凍庫」などの常識

「美味しい」と「不味い」の意味的な違いが理解できないからです。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか?

AIの事が少し理解できたと思います。

 

本書では、この東ロボくんプロジェクトを通して、いかに読解能力が大切かを説き。

現代の学校教育に問題提起をしています。

 

こういった技術は日々進歩しているので、基礎知識として必読だと思います!

興味が湧いた方は是非本書をご覧ください!

 

TEDで登壇もしているのでよろしければこちらもご覧ください。

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